婚姻費用とは

夫婦は婚姻生活から生じる費用を互いに分担する義務を負っており(民法第760条)、 法律上の婚姻関係が続いている限り、別居期間中であっても婚姻生活から生じる費用を分担する義務があります。
夫婦のどちらがどの程度負担するかは、資産、収入、その他一切の事情を考慮して決められます。一般的には夫婦双方の収入を基に決められることが多く、夫の方が妻より年収が高い例が多いため夫から妻へ婚姻費用を支払うことが大多数ですが、夫婦の収入状況によっては妻が夫に婚姻費用を支払うこともあります。
未成年の子を連れて別居した場合の婚姻費用の中には、子の生活費(養育費)も含まれます。

婚姻費用の額について

婚姻費用額は、法律で定められているものではないので、当事者により自由に決めることが可能です。しかし、多くの場合、婚姻費用額が問題となるのは、夫婦仲が円満でなくなり別居を開始した後ですので、夫婦で合意することが難しい状況となります。
そこで、実務上は、家庭裁判所で用いられている標準算定表を使って金額を決めます。標準算定表は、収入に占める可処分所得を算出するにあたり、生活費、教育費、職業費などにつき統計資料を用いて、支払義務者と支払権利者の収入に従い、簡易迅速に婚姻費用を算出する目的で作成されました。平成15年に発表され実務上広く用いられてきましたが、令和元年12月、統計資料を新しくした改訂標準算定表が公表されました。
今後は改訂標準算定表を基に婚姻費用の取り決めが行われていくものと考えられます。
なお、当事者が合意した場合、標準算定表にあてはまらない特殊な事情がある場合など、必ずしも標準算定表と同額の婚姻費用額とならない事例もあります。最近増えている問題は、一方又は双方が高額所得者の場合、片方が住宅ローン返済中の自宅にもう一方が居住している場合などです。標準算定表の上限を超える収入がある場合や、双方の収入が高くこれまで夫婦別会計で生活してきた場合などは、定め方に工夫が必要です。また、住宅ローンを抱えている方が自宅を飛び出して別居する場合は二重の住居費が発生することになり、どのように定めるか難しいところです。その他、子どもの教育費に関しても、既に子が高額の習い事や進学塾に通っていたり私立学校へ通学していたりした場合に、上乗せの要否や上乗せの金額が問題となることが増えています。

婚姻費用の請求の仕方

婚姻費用を請求する方法としては、話し合い、調停、審判があります。
婚姻費用は毎日の生活費ですから、当事者の話し合いにより簡易迅速に定めることができるならばそれが一番です。また、話し合いですから、標準算定表の金額に縛られることなく、家庭に合わせて柔軟に婚姻費用額を設定することが可能です。話し合いは当事者間で行うほか、代理人間で行うこともあります。
当事者間での話し合いが困難な場合は、家庭裁判所で話し合いをします。相手方の住所地又は当事者の合意した家庭裁判所に対して、婚姻費用分担調停の申立てをします。調停では、調停委員2名が話し合いを手助けしてくれ、標準算定表の説明をしてくれます。
 調停での話し合いがうまくいかない場合は、調停は不成立となり審判へと移行します。審判では、互いの主張及び資料を提出し、必要に応じて審判官の審尋を経たうえで、審判が出されます。

弁護士に依頼するタイミング

どのタイミングで弁護士に依頼されても構いません。
最近は、別居の時点で離婚を考えている方が多く、別居前のタイミングでご相談に来られる方が多いです。この場合は、別居に際してのアドバイスや別居時点での受任通知の発送などより柔軟な対応が可能です。
弁護士費用は、ご依頼の内容(婚姻費用の示談交渉のみなのか、離婚交渉も依頼するのか、調停をするのかなど)によります。費用の設定も弁護士により様々ですのでご相談の弁護士にお気軽にお尋ねください。

 

 

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